質屋の孫作の顧客に、鉱山師の徳之助や考古学教授の次郎などがいたが、ある日、孫作は自慢にしている春画の絵草紙の間から、一枚の古文書を見つけた。次郎がそれを埋蔵金のあり場を書いた古文書だと言い出したため、大騒ぎになった。次郎の判読では、三万七千両の軍資金が何処かに隠されているということだった。ところが、その場所は古文書がちぎれていて分らず、孫作は研究費を出して次郎に調査を依頼した。絵草紙の元の持主は割烹旅館「千成」の女将圭子だが、「千成」は豊臣家の血筋をひく由緒ある家であることから、埋蔵金は豊臣家の軍資金であることが分った。一方この話を耳にしたペテン師グループの三井、山根、砂山たちは、徳之助や次郎たちが埋蔵金を探して歩く先々で見張っていた。そんなことは知らない次郎や徳之助たちはようやくのことで古文書の続きを見つけ出し、江戸と富士山を結ぶ線上が隠し場所であ...
私鉄沿線、N駅の商店街のはずれに、森田医院がある。若先生の吾助、看護婦の由美らが旅行中で、残るは森田先生一人で本日休診だが、駅前交番の伴野巡査が若い娘を連れて、やって来た。昨夜暴漢に襲われたというのだ。犯人の目印は、若い娘悠子に噛みつかれた鼻の頭の傷だけだと言う。伴野巡査は早速犯人捜しにのり出した。そのとき表通りをマスクをかけた男とつれの女が通りかかった。これぞ犯人と追いかけた伴野巡査に街のチンピラ次郎の助ッ人で男は見事逮捕された。一方伊豆に行った吾助先生一行は、旅館の女将、番頭の三平を加えて大騒ぎを演じていた。その頃、次郎は大吉親分に呼ばれ、次郎が親分とは兄弟分の××組長の息子逮捕に協力したと大目玉をくらい、指をつめろと言い渡されたが、森田医院で、恋人染子らから「今更指をつめるのは現代人のすることではない」と諭され、森田医院を出た。その日、森田先生...
「あたいがスリだってさあ調べて」と威勢のいい啖呵と共に裸になったちゃりんこ浮子(夏純子)が、ストリッパー斜旋業「新宿芸能社」の金沢(森繁久彌)、竜子(市原悦子)、踊り子鳥子(瞳麗子)、タマ子(中川加奈)たちのおトソ気分をフッ飛ばした。浮子に満員電車の中で、財布をスラれた金沢が、デパートで彼女を見つけ「芸能社」に連れてきたのである。最初は威勢のよかった浮子も、金沢と竜子に親身になって説教されると涙を流して更生を誓い、「新宿芸能社」に住み込んだうえ、手先の器用なことから手品ストリップを考えつき、人気はうなぎ上りとなった。ある日、浮子の父親で前科十七犯のスリの親分浅草の銀作(西村晃)の身内で左ききの武(米倉斉加年)が、浮子を連れ戻しにきた。父親のいいつけとあって仕方なく浮子は帰っていった。その途中、無意識でスッてしまった女の財布の中に、母親が田舎で仕送りを...
東京都と千葉県の境を流れる江戸川の河口に、貝と海苔と釣場で有名な浦粕集落がある。ある日、「先生」と呼ばれる三文文士がやってきたが、プリプリ張り切った若い女の肢態に眼をうばわれ、当分の居を増さんの家の二階にきめた。楽しい刺戟の中でケッサクをものそうというわけだ。先生は見知らぬ老人から、青べか舟を売りつけられた。ところで先生の観察によれば、ここは他人の女房と寝るぐらいのことは珍しくなく、動物的本能が公然と罷り通っている大変なところである。町にはごったく屋という小料理屋が多い。その中の一軒、「澄川」に威勢のいいおせい、おきん、おかつの三人が働いている。先生の眼を惹いたのはおせいであった。「澄川」の真ン前にみその洋品雑貨店があり、ドラ息子の花嫁は里帰りしたまま戻ってこない。べか舟を先生に売りつけた芳爺、消防署長わに久、天ぷら屋の勘六夫婦などが五郎は不能らしい...
イタリアの人形芸術師マリアペレゴが生み出したネズミのキャラクター“トッポジージョ”を主役に、日本の市川崑監督が撮り上げた、人形と実際の人間の共演で描く痛快パペットムービー。監督と永六輔が参加した脚本を基に、マリアペレゴの繊細な操演で生き生きと描かれたトッポジージョが、地球の破滅を食い止めるため大活躍する。ジージョの声を中村メイコが担当するほか、小林桂樹がナレーションで参加。2004年にリバイバル上映。
とある街の片隅で、なんとも寂しい独身生活を送っていたネズミのトッポジージョ。彼はある晩、眠れずに街中をフラフラさまよっていて赤い風船に出会う。その風船を気に入ったジージョは一緒に夜の街を散歩することに。同じ頃、5人組の男たちが、銀行の地下金庫への侵入を目論んで怪しげな行動に出ていた。彼らの狙いは金庫に納められていた“ボタン”。それは世界を破...
山田正助はもの心もつかぬうち親に死別し世の冷たい風に晒されてきたから、三度三度のオマンマにありつける上、何がしかの俸給までもらえる軍隊は、全く天国に思えた。意地悪な二年兵が、彼が図体がでかく鈍重だからというだけで他の連中よりもビンタの数を多くしようと大したことではなかった。ただ人の好意と情にはからきし弱かった。入営した日に最初に口をきいてくれたからというだけで棟本に甘えきったり、意地悪二年兵に仇討してやれと皆にケツを叩かれても、いざ優しい言葉をかけられるとフニャフニャになってしまう始末だった。だが、中隊長の寄せる好意には山正も少々閉口した。営倉に入れられれば一緒につきあうし、出て来れば柿内二等兵を先生にして強引に読み書きを習わせる。昭和七年大演習の折、山正は天皇の“実物”を見た。期待は全く裏切られたが、この日から山正は天皇が大好きになった。戦争が終る...
昭和11(1936)年の長野県南佐久郡大日向村は俗に半日村と呼ばれる荒廃した日陰の農村だった。年の瀬も迫り、村長由井啓之進(市川笑太郎)は滞納した税の督促のため村を回っていた。滞納のほか、村には多額の総借金がある。貧しい農家に滞納した税金を支払う余力はない。村長は材木問屋である油屋の村野(橘小三郎)に、土木費の立て替えを厳しく催促されて辞職する。専務理事の堀川清躬(きよみ)(河原崎)は、堀川のかつての主人の息子で、東京の保険会社に勤めている浅川武麿(中村翫右衛門)を帰郷させて村長に迎え、村政の立て直しを図ることにした。**が熱心に主張している満洲大陸への開拓農民運動こそ村を甦生に導くという意見で、堀川と浅川は合意した。地主の天川治之助(坂東調右衛門)、笹屋貫助(坂東みのる)、油屋の村野らは、分村計画に懐疑的だった。また、先祖伝来の土地に愛着を持つ老...