製作は高木次郎。脚本は「ごろつき船」の菊島隆三と宮田輝明の共同執筆。監督と撮影は「月よりの母」の阿部豊と三村明のコンビ。出演者は「めし」の上原謙、「ブンガワンソロ」の久慈あさみ、「この春初恋あり」の香川京子と小堀誠、フレーミングなど。
アメリカの航空会社のパイロットのジェームスは、羽田へ着くと早速「鷹」の西田を訪ねた。二人は第二次大戦中空中戦で同じ孤島に不時着し、一緒に暮らすうちに無二の親友となって再会を誓った仲だった。ジェームスは自動車の故障で途中水澤眞知子と知り合い、彼女の口から西田の近況を知った。眞知子は西田がユスリ専門の赤新聞の編集長をしていると告げるが実は眞知子の父清太郎が生産妨害で日東造船ののっとりを策しているのと戦っているのだった。いさめても父がききいれてくれぬのに愛想をつかした眞知子は、ジェームスに自分が西田を愛していることを打ち明け...
下町で名代の寿司屋、江戸ぎん。銀太郎はその跡取息子だが、亡父が見込んでかれの兄貴分にした清吉がお店大事とはたらくおかげで、大学の病理学教室で医学修業尊一とのんきである。実直で男っぷりもいい清吉を女主人お澄も信じきっているが、近所の小唄師匠小ふじもここ三年ばかり通いつめての惚れこみよう。銀太郎はある日、界隈の老舗の主人ばかりで組織する“馬鹿旦那会”の寄り合いで、突然じんましんをおこしたアプレ芸者リルを介抱し、誘惑されそうになる。リルの姉芸者清香は清吉のじつの妹、若旦那に惚れたのは私がさき、と一喝してリルに手をひかせた。それからというもの、清香の攻勢ものすごく、ウブな銀太郎はすっかり逆上して帰宅の時間さだまらず、時折は朝帰りまでやらかす始末。母親お澄もだが、清吉の憤り一ぺんに爆発して清香をなじれば、無鉄砲なリルの手から若旦那をまもり、かたがた昂奮しきった...
名優嵐粂三郎の御曹子としてしつけられ、今は売出しの若手嵐粂吉は、父にも秘めた恋人--深川芸者の満津次がある。急にもち上った某藩留守居役日下部伊織の身請話で、家をぬけだした彼女が粂吉と相談中、その船宿へ不意にのりこんできた日下部一味との争いとなり、二階から水中におちた日下部がてっきり死んだものと粂吉は早呑込み。満津次ともども駆落ちした。二人は忽ちつかまったが、粂吉は岸壁から海へ転落したまま消息を絶つ。以来三年。--東海道の宿場宿場を、女を尋ねまわる旅渡世の男、その名も疾風の粂と変わる粂吉の姿である。その彼を嵐粂吉そっくりね、と岡惚れして追っかけまわすのは江戸生れのお政、迷惑がって彼が足をはやめる折しも、土地の顔役黒馬の庄五郎が生娘お光にからむのを目にして、さんざん打ちすえる。お光の叔母お倉に彼女を府中の親許鱗屋まで届けてくれと頼まれて、事の行がかり上こ...