行列が鉢合ってしまった尾州紀州の両若殿、徳川宗長と徳川義忠。そこへ江戸の町人弥次郎兵衛と喜多八の馬が飛び込んだ。身軽な町人の身分にすっかり魅せられた若殿は、それぞれの替え玉に弥次喜多を据え付けて自分たちが弥次喜多を名乗って保土ヶ谷の本陣を抜け出した。自由な旅に有頂天の二人。さて道中知り合った鉄砲の名人垣内権兵衛が腕前を見せようと巡礼娘お小夜の旅杖を狙ったところ、その夜、お小夜が若殿たちへの面当てのように自ら命を絶ったのだ。この死んだはずの娘が昼夜の区別なく現れて2人に息もつかせない。小田原では女中に言い寄られ、箱根では山賊を懲らしめ、三宿では二人を探す家臣から逃げて女歌舞伎の一座に紛れ込み。と幽霊騒ぎだけでなくさまざまな出来事にあいながら東海道を進む。そして由比でお小夜に再会。足がある!怨霊だと思ったのは単なる勘違いで小田原で自殺したのはお...
江戸金竜山浅草寺の境内は、二年振りに名物羽子板市が開かれ、名女形として名高い花の家菊之丞の似顔絵羽子板が初めて荒木屋から売り出されるとあって、江戸中の娘達がどっと押し寄せ空前の大混雑を呈していた。その騒ぎの真最中、日頃、小町娘と美貌を謳われていた娘たちが七人誘拐されるという事件がおきた。北町奉行所筆頭与力花井五郎左衛門は事件の重大さを察知、市井に暮らしている親友の霞一平に助力を頼んだ。通称お役者一平と呼ばれる霞一平は、堅苦しい武家生活を嫌って市中に住み、空っ風の半七やお光に囲まれて、よろず指南を看板にゆうゆうと暮らしている風流人であった。一平は翌日、花村座へ菊之丞を訪ね、自分が菊之丞に生き写しなのに驚いた。そして、菊之丞羽子板の発案者が日頃何かといわくのある廻船問屋多賀屋藤蔵であることを聞き出した。その夜、多賀屋の店先きに荒木屋手代殺し及び娘誘拐の黒...