明治9年、東京に戻った真海は、一夜を吉原で遊んだ。そしてそこで、女郎の千代鶴とその情夫でチンピラの秀次を千代鶴に横恋慕する武総組代貸黒川から救う。それが縁で真海は、秀次のヤサの元越前丸岡藩主の屋敷に転がり込むことになった。そこは、当主の有馬義春をはじめ貧乏人たちが住みついてはきだめ屋敷と呼ばれ、秀次のような得体の知れない遊び人も多数紛れ込んでいた。女胴師のお銀もその中の一人である。真海は、さしの勝負でお銀に勝ち金と体を手に入れ楽しんだが、一夜明けるとお銀に有金を残らず持ち逃げされていた。その頃、両国界隈を縄張りとする武総組は、力づくではきだめ屋敷を乗っ取ろうとするが、真海の出現によってコテンパンに撃退される。だが、武総組は卑劣な手段で屋敷の連中を次々と襲った。そんな時、宿敵了達が現れ、真海に決闘を迫ってきたのだった。
時は大正の終り信州。生き別れの母を探し求めながら渡世修業の旅を続ける妻恋いお駒は、渡世の義理で大薮組親分を斬ってしまった。やがて小諸十六島一家の賭場に足を踏み入れたお駒は、そこで幼ない娘お夏を連れた流れ者筑波常治と知りあった。賭場を出たお駒は、後を追ってきた大薮一家の男たちに襲われ、その窮地を常治に救われた。常治がわらじをぬいだ十六島一家と、野沢一家のでいりはその夜のことであった。一宿一飯の義理のために死を覚悟した常治は、長野から三里ほど入った山の中にある鹿教井温泉の猿渡屋の祖父母のもとに、お夏を届けてほしいとお駒に頼んだ。鹿教井温泉の湯元の利権は、昔から猿渡屋、鹿の湯、鳴沢屋の三軒の旅館が握っていたが、今、二年後の鉄道開通に目をつけた博徒石渡組によって鳴沢屋は乗っとられ、残った旅館にも圧力が加えられていた。石渡組の魔手はお夏にも伸び、人質になったお...
甲州黒戸金山より江戸に送られる途中の黄金二十貫が伊那山岳党に襲われ奪われた。幕府の必死の追求にも黄金の行方は判らず、老中堀田豊後守は、医者でありながら賞金稼ぎの剣客錣市兵衛に黄金奪還を依頼した。期限は五日間である。市兵衛は望遠付き仕込杖、組立銃、防弾チョッキなど七つ道具を身につけ、黒戸金山の麓、台ヶ原宿へと乗り込んだ。そこへは、一癖も二癖もある賞金稼ぎたちが各地から集って来ていた。市兵衛はまず、代官所に捕えられていた、伊那山岳党の首領夜叉狼を救出。しかし、既に黄金は夜叉狼の手を放れていた。一方、賞金稼ぎの薊弥十郎は、夜叉狼の妹飛び天童を捕えており、さらに市兵衛から夜叉狼を奪おうとするが失敗する。しかし、その際、市兵衛の撃った銃が、夜叉狼に命中、夜叉狼は、女郎屋の女王人、鬼念仏のお紋が黄金の行方を知っていると言い残し息を引き取った。市兵衛は早速、...